HoT-JeTリレー:北海道・東北の登録日本語教員養成機関のご紹介(青森大学)
「HoT-JeTリレー」は、北海道・東北の教員養成の現場から教育現場までさまざまな現場を紹介してもらう企画です。今回は、北海道・東北の登録日本語教員養成機関のみなさんに、その課程の特色や工夫についてご紹介いただきます。この記事が、養成機関同士の知見を深める場となり、また、日本語教育の未来を担う人材の育成に役立つ一助となれば幸いです。各機関の記事を、ぜひご一読ください。なお、この記事は掲載時点の情報が掲載されています。最新の情報は各機関にお尋ねください。
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日本語教師として「地域」とともに生きる
北に陸奥湾、南に八甲田連邦と、豊かな自然に囲まれた青森大学では、「地域とともに生きる大学」を理念にさまざまな地域貢献活動に取り組んでいます。その一つが「多文化共生」です。青森県の在留外国人数は8,000人を超えていますが、日本語教室のない市町村がほとんどで地域格差や人材不足が喫緊の課題となっています。本学では2019年より「日本語教員養成プログラム」を開設し、地域特有の課題解決に向け、多様化する学習者のニーズに対応できる日本語教育人材の育成に取り組んでいます。
本学のプログラムの特徴は、多様な背景を持つ受講生が一緒に学んでいることです。学生たちは、学部横断プログラムとして文系・理系の区別なく受講でき、プログラムの必修科目として取得できる単位のほとんどは、各学部の卒業要件単位として認められます(一部養成科目と実践研修科目を除く)。また、学部を問わず受講できるよう土曜日を中心に授業を開講しており、リスキリング・リカレント教育としての社会人の受け入れも積極的に行っています。そのため、年代も10代後半から70代の方まで、職業も学生、会社員、公務員、教員、主婦など、さまざまなバックグラウンドを持っている方々が一緒に学んでいます。
もう一つの特徴は、地域貢献活動が修了要件の一つになっていることです。本学と青森県観光国際交流機構との連携協定に基づき、本学のプログラムの一部が「青森県日本語指導サポーター養成講座」(図1参照)になっており、受講1年目から日本語指導サポーターとして登録され、学内外で活躍できます。県内各地で実施される交流型日本語教室に参加したり、小中学校へ子どもの日本語支援に出向いたりして経験を積み、実践的なスキルを身につけます。実践研修課程の教育実習では、学部留学生を対象に教壇実習を行いますが、このような地域活動を中心とした学びを重視することで、指導の幅を広げるだけでなく、外国人住民と顔の見える関係を築くことや居場所づくりの大切さも学びます。
本学のような地方の小さな私立大学の場合、課題も少なくありません。まず、専門分野の教員が限られるなど、学内リソースが限定的になりがちです。本学では学内外の資源を見直し、オムニバス形式の授業やライブ配信型の遠隔授業を活用して、多様な専門分野の教員から専門性の高い知識が学べる機会を増やしています。また、国家資格化により今まで以上にハードルが高くなったことで、受講希望者の減少やドロップアウトする学生が増えることが懸念されます。そのため、本学では複数の履修モデルを示して、個々の希望に沿った履修指導を丁寧に行うようにしています。さらに、キャリア支援のリソースも限られます。県内には日本語学校が1校しかなく接点が少ないため、イベントや勉強会などを通して留学生や先生方との交流を深めることで、将来のキャリアを考える機会を提供しています。
青森大学日本語教育センターHP:https://www.aomori-u.ac.jp/japanese_language_education-_center/
公益社団法人青森県観光国際交流機構HP:https://www.kokusai-koryu.jp/

図1 青森県における日本語教育人材育成のイメージ
(青森大学日本語教育センター長 石塚ゆかり)
青森市交流型日本語教室の様子


